CPAPLife

昼間に眠気がひどくて、ミスばかり…。この間は事故を起こしかけてしまった。それって、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のせいかもしれません。SASは簡単には治療することはできません。でも、CPAPがあれば、事故を未然に防ぐことができます。この記事ではCPAPについてご紹介します。

睡眠時無呼吸症候群ってどんな症状?

睡眠時無呼吸症候群って何?

睡眠時無呼吸症候群は、英語で書くとSleep Apnea Syndromeといいます。apneaという単語は聞きなれない人も多いと思いますが、医学の言葉で「無呼吸」という意味です。すなわち、睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは眠っている間の呼吸が何度も繰り返して止まるという病気です。
「眠っている間の呼吸が止まるなんて死ぬんじゃないのか!?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。医学的には「無呼吸」とは、10秒以上の間気道の空気の流れが止まった状態を意味します。そして、SASの定義は一晩の睡眠で30回以上無呼吸の状態であるか、1時間につき5回以上無呼吸の状態が続くことです。ですので、SASそのものは心筋梗塞や脳卒中と違って、直接的な死因となることはありません。でも、だからといって安心するのはまだ早いです。それは、SASによって様々な症状が引き起こされ、その症状によって重大な事故が起きてしまう恐れがあるためです。

睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされる症状はどんなもの?

 起きている間に働く体と脳を休ませるために、睡眠は行われます。その睡眠中に無呼吸、すなわち酸素がすみずみまでいきわたらなくなる状態になると、どうなるのでしょうか?まず、脳は「酸素が足りなくて大変だ!」という危険信号を発します。そのため、今体の中にある酸素を体中に行きわたらすことができるように、必死に血液中の酸素を体中に送ります。そうすると、眠っているにもかかわらず、走っている時のように心臓は必死に働かなくてはなりません。「無呼吸の定義は10秒以上空気の流れが止まること」と先ほどお話しました。しかし、無呼吸が長い人だと約3分も呼吸が止まっていることもあるそうです。それだけ長い間呼吸を止めていたら、絶対にそのあとぜぇぜぇと呼吸する状態になりますよね。また、呼吸が再開したらこれでもう大丈夫というわけではありません。しばらく眠っていたら、また無呼吸状態に陥ってしまうのです。これでは脳も体もしっかり休むことができません。そのため、SASになっている人は日中に強い眠気やだるさを感じたり、集中力が低下しやすいという症状が引き起こされるのです。
 起きているときの眠気やだるさ、集中力の低下以外にも、SASの人は眠っているときや起床したときに特徴的な症状があります。具体的な症状は以下の通りです。
 ・眠っているときの症状:いびき、呼吸が止まる、むせる、何度も目を覚ましやすいなど
 ・起床したときの症状:口が渇く、頭痛がする、しっかり寝た感じがしないなど

睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされる問題

SASの主な症状は強い眠気やだるさ、集中力の低下などです。これだけ聞くと、「日中にしっかり本人が注意していればいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、SASは決して軽く見ていい病気ではありません。
「睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされる症状はどんなもの?」でご説明したように、無呼吸の状態は心臓血管系に強い負担を実はかけています。そのため、SASの人は高血圧、脳卒中など心臓血管系の病気のリスクも必然的に高いのです。
また、SASを患っている患者さんの40%が運転中に眠気を感じやすいことが報告されています。普通の人でもたまに運転中に眠気を感じることがありますが、それでも10%くらいです。実に4倍も、SASの患者さんたちは普通の人よりも眠気を感じやすいといえます。また、めったに起こらない居眠り運転。普通の人はだいたい5%ぐらいしか起こしません。でも、SASの人は30%くらいが居眠り運転を引き起こしやすいといわれています。このように、SASを患った人が感じる眠気は、重大な事故を引き起こすぐらいのものといえます。
実際に、SASが原因で引き起こされた悲劇はたくさんあります。例えば、2012年に群馬県の関越自動車道で起きた高速バスでの事故をご存知でしょうか?当時はかなりセンセーショナルに報道されましたよね。ディズニーリゾートへ向かう途中で起こった突然の事故。高速バスが道路の防音壁に突っ込み、バスが壁に貫通されました。その結果、乗客乗員46人のうち、7人もが死亡、38人は重軽傷を負いました。この事故を受けて、バス会社の安全管理体制の整え方の見直し・再発防止のために国も動きました。
ここまで大きなものではなくても、仕事中に急に強い眠気に襲われたりしたことはありませんか?自分が眠っている間の呼吸やいびきに自分で気づくことなんて、なかなかありませんよね。一説には日本のSASの潜在患者数は300万人以上ともいわれています。日本の人口がだいたい1.3億人ですので、100人に2人がSASを患っている恐れがあります。もし、「ひょっとして自分は…」、「夫の眠っているときの呼吸はおかしい気がする」と思われるふしのある方は、ぜひ病院に行って相談してみてください。睡眠外来や睡眠センターのようにSAS専門の外来があるところが一番です。とはいえ、他にも内科、呼吸器科、循環器科、耳鼻咽頭科、精神科などでも対応しているところもあります。まずは、かかりつけ医師に相談してみましょう。

睡眠時無呼吸症候群の診断方法

 SASは2つの検査の結果から診断されます。まず、病院に行ったら簡単な問診を受けます。といっても、SASのメイン症状である眠っている間の無呼吸状態については寝ている本人では分からないので、日中の眠気や起きた時の頭痛、夜間に目が覚めやすかったりするかなどが尋ねられます。もし、同じ部屋で寝ている家族がいるのなら、問診の時についてきてもらえるとお医者さんに寝ている時の状況について伝えやすいでしょう。
 問診でSASの可能性があると判断されたら、簡易検査が行われます。①呼吸しているかを調べる呼吸センサー(鼻と口につける)、②血液中の酸素濃度を調べる血中酸素飽和度(指につける)を寝ている最中に測定することで、簡易検査は行われます。ごく簡単に取り付けられるため、家に持ち帰って後日病院で解析することもできます。なお、SASの簡易検査については健康保険が適用されます。
 簡易検査でもSASの疑いがあると診断された場合、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査が行われます。病院に一泊入院して、①口と鼻に取り付ける呼吸センサー、②指に取り付けて血液中の酸素の割合を調べる血中酸素飽和度、③胸呼吸を調べる呼吸運動センサー、④お腹に取り付ける呼吸運動センサー、⑤脳波、⑥眼電図、⑦喉の筋電図、⑧心電図、⑨足の筋電図などを測定して、総合的にSASであるかの診断が行われます。PSG検査も健康保険が適用されますが、これだけたくさんのものを調べているだけあって、1万円ぐらいかかります。また、検査費用とは別に入院費用や差額ベッド代もかかります。実際はもう少しお金が必要になると見積もっていたほうがいいでしょう。詳しい検査金額や入院費用などは、実際に検査を受ける病院の先生にお尋ねしてください。

こんな人が危ない!

睡眠時無呼吸症候群が起きるメカニズム

 どんな人がSASになりやすいかの前に、SASはどんなメカニズムで睡眠中に起こるのかを説明させてください。人体には色々な筋肉があるのですが、起きている間は基本的にどの筋肉も活動しています。そして、眠っているときに筋肉は弛緩します。口の中の舌もそうです。起きている時は筋肉で舌が持ち上げられているので、たとえ仰向けに寝転がったとしても、気道まで舌は落ち込んできません。しかし、寝ている時には舌が気道に落ち込んできます。といっても、普通の人の場合、舌が気道に落ちてきたとしても、気道がふさがってしまうということはありません。舌や首の周りにたくさんの脂肪が付いている、つまり太っている人の場合や、もともとあごが小さくて気道が狭い人の場合に舌が気道を塞いでしまって無呼吸状態になってしまうのです。

こんな人がSASになりやすい!

(1)太っている人

 まず、太っている人がSASになりやすいです。メタボリックシンドロームの場合、お腹周りの脂肪の量が問題となりやすいですが、SASの場合は特に首周りの肉付きが問題となります。SASが起きるメカニズムでも書いたように、首周りの脂肪が大きいほど、気道がふさがりやすいためです。
 また、太っているということから生活習慣病の人はSASになりやすいです。他にも、女性は下半身に脂肪がつきやすい一方、男性は上半身に脂肪がつきやすいです。そのため、男性は女性の2倍から3倍ほどSASのリスクが高いといわれています。ただし、女性はSASになりにくいかというと、そうでもありません。女性も年代のよってはSASになりやすくなります。女性ホルモンのプロゲステロンには喉の筋肉の活動を高めるという働きがあります。しかし、閉経してしまうと女性ホルモンのバランスが崩れてしまい、この喉の筋肉がちゃんと働かなくなってしまうのです。一説には閉経後の女性は閉経前の女性と比べると、SASのリスクが3倍も高くなるといわれています。生活習慣病のことも踏まえると、男女どちらも中高年ぐらいの年齢ならば若い頃と比べてSASのリスクが高いことを覚えておきたいですね。

(2)あごが小さい人

 喉の気道がふさがりやすいことがSASの原因に繋がりやすいのなら、痩せている自分は大丈夫…。そう思っている人はいませんか?実はSASの3割は太っている人ではありません。あごが小さいと、気道が狭くなりやすいのです。アジア系、特に日本を含む東アジア系の人には元々あごが小さ目な人が多い。そういう人はSASになっていないかチェックしていたほうがいいでしょう。

自分でできるSASのリスクチェック

 SASを正確に診断するためにはPSG検査を受ける必要があります。でも、自分でもSASのリスクを簡単に調べることはできます。是非、以下を活用してみてください。ただし、SASの眠気を自覚している人は半数ぐらいといわれています。もし、一緒に住んでいる家族やパートナーからいびきがうるさいといわれるようなら、きちんとした病院で相談して、ちゃんとした検査を受けることをお勧めします。

(1)気道の広さの確認

 自分の気道が狭くないかを簡単に自分でチェックできる方法があります。鏡の前で、子どもの頃に病院でお医者さんに喉を見せたときのように、舌をベーっとさせてみてください。その時に喉ちんこは見えていますか?もし見えていたら上気道は十分な広さがあるといえます。反対に、喉ちんこが見えない場合は、元々上気道が狭いのかもしれません。上気道が狭いイコールSASになるというわけではありません。でも、上気道が狭い人と比べると太ったことによってSASになってしまうというなりやすさはあります。

(2) チェックリスト

 Epworth sleepiness scale(エプワース眠気指数; ESS)という簡単なチェックリストがあります。これを使うことで現在の自分のSASの程度をチェックすることができます。チェックリストは8項目あります。「座って読書中」や「アルコールを飲まずに昼食をとった後、静かに座っているとき」のように一人で静かに過ごしているときから、「自動車を運転中に信号や交通渋滞などにより数分間止まったとき」のように作業中の眠気を0から3の4段階でチェックします。その得点が高いほど、SASが重症であるといわれています。ESSだけでSASかどうかきちんと判断できるわけではありません。そのため、参考程度に使ってください。

SASを治す方法

 「こんな人がSASになりやすい!」でご説明したように、SASの原因は生まれつきの気道の狭さ、または太ったことで気道が狭くなったことです。そのため、薬を使って病気を治すというように治療は簡単にはいきません。長い付き合いとなります。

SASの治療方法

 SASの治療方法にはCPAP治療やマウスピース、外科的手術の3つがあります。このうち、外科的手術のみが根治療法で、CPAP治療やマウスピースは一時的に症状を抑える対症療法です。根治療法のほうが一気に治療ができていいんじゃないかと思われる人もいるかもしれません。でも、SASの原因や重症度によって最善の選択肢は違います。自分に合った治療方法をお医者さんとしっかり考えて選びましょう。

(1)CPAP治療

 Continuous Positive Airway Pressure、略してCPAP(シーパップ)治療は現在SASの治療法として世界中で最も広まっている方法です。CPAP治療を受けている人の半数ぐらいがSASの症状が劇的に解消しているといわれています。治療内容はいたってシンプルで、鼻から酸素を吸入するCPAP装置という機械があるのですが、それを取り付けることで寝ている間の無呼吸状態を防ぐというものです。「気道がふさがるのなら酸素マスクなんてつけていても無駄じゃないの?」と思われるかもしれません。でも、CPAPでは空気圧を利用して落ち込んだ舌の筋肉が持ち上げるように酸素を送り続けるので、眠っている間の無呼吸状態が阻止されるのです。CPAP治療の詳しい説明は、「CPAPって?」でします。

(2)マウスピース

 マウスピースとは、歯科装具を寝ている間につけるだけのSASの対症療法です。SASは太っていて首周りに脂肪がたくさんついている人だけではなく、元々あごが細いために気道が狭い人でも起こりやすいというお話をしましたよね。そのため、あごの形をマウスピースで矯正することによって、無呼吸状態に陥りにくくすることができるのです。ただし、マウスピースによる矯正効果があるのは、軽度のSASの人の場合です。特に重症の場合だとマウスピースの治療効果が得られにくいといわれています。また、マウスピースを作ってもらう歯医者さんはどこでもいいというわけではありません。できるならば、SASについて知識がある歯医者さんに作ってもらうことをお勧めします。なお、入れ歯に保険適用と自費のものがあるように、マウスピースも保険適用外になってしまうこともあります。保険診療でマウスピースを作ってもらえるかは担当の歯医者さんにご相談ください。

(3)外科的手術

 外科的手術は、気道を塞いでいる喉ちんこの一部を切り取ることでSASを根本的に治療するという方法です。扁桃腺が肥大することによってSASになっている子どもや成人の一部では、この外科的手術によってSASが治った例があります。ただし、全員に十分な治療効果が得られているわけではありません。何より手術後数年してからSASが再発してしまった事例もあります。そのため、外科的手術を行うべきかについては慎重な判断が必要といえます。

生活習慣の改善

特に太っていることが原因でSASになってしまった場合、治療と同じぐらい生活習慣を振り返って改善することが大切となります。また、SASは眠っている間に舌が喉に落ち込んで生じるという問題であるため、眠り方を改善するだけで症状が改善されることもあります。もし、以下の生活習慣がある方はこれを機に改善しましょう。

(1)ダイエットをする

まずはダイエットです。
食生活では、ご飯やパンといった糖質の多い炭水化物を減らすことが大切です。お菓子なども減らしましょう。果物はビタミンが取れるからといって、ダイエット中でも果物はしっかり食べている方はいませんか?でも、実は果物は糖質が高いです。そのため、果物を食べる量も減らしましょう。
運動も大切です。1日に10,000歩以上歩くことが望ましいです。最低6,000歩ぐらいは歩きましょう。また、週に2日ぐらいスポーツや運動する日があるといいでしょう。しかし、仕事でそうもいっていられないという方もいるでしょう。そういう方にはエレベーターを使わずに階段を上り下りすることをお勧めします。適正体重を目指しましょう。

(2)寝酒を止める

 アルコールには筋肉を緩める働きがあります。日本酒で換算すると、お酒は1日に2合までに節酒しましょう。特に、太っている人や、元々気道が狭い人は注意しておきたいところです。他にも、寝酒の習慣は止めましょう。睡眠中に無呼吸になるリスクを高めるだけです。

(3)仰向けではなく横向きに寝る

 仰向けで寝ると、重力が特にかかりやすいです。そのため、舌が気道に落ち込みやすくなります。そこで、横向きで寝る習慣をお勧めします。「えっ、それだけで変わるの?」と思われるかもしれません。でも、少しずつの改善の積み重ねが大きな症状の緩和に繋がるのです。

(4)喫煙を止める

 タバコを吸うことによって気道に炎症が引き起こされます。その結果、気道がむくんでしまい、空気の流れが悪くなってしまいます。そのため、喫煙習慣がある方は禁煙を心がける方がいいでしょう。

(5)睡眠薬を止める

 アルコールと同じように、睡眠薬には筋肉を緩める働きがあります。睡眠薬を服用している方は睡眠薬がないと眠れないのでしょうが、SASも恐ろしい病気です。睡眠薬を処方してくれた先生、SASを診てくれている先生とよく相談して、可能なら睡眠薬を止める努力をしてみてください。

CPAPって?

 「SASを治す方法」でCPAP治療について少しお話しました。ここでは、この治療法について具体的に説明していきます。

CPAPってどんな機械?

 CPAPとは鼻につけたマスクから酸素を送り続ける機械です。ただ酸素を流すのではなく空気圧で流し込むので舌が持ち上がり、気道に酸素を通すことができます。
機種にもよりますがCPAPはそこまで大掛かりな道具というわけではありません。横幅14.5cm×奥行13cm×高さ10cmぐらいのコンパクトなものもあります。ベッドの横にあるサイドデスクや棚などに置けるぐらいの大きさです。もっと小さいものだと、横幅16.5cm×奥行8.4cm×高さ5.1cmの機種もあります。そのため、仕事で出張が多い人でもCPAP治療を受け続けることができます。
CPAPは価格が安くても10万円ぐらいはします。そのため、CPAP装置は病院でレンタルして使うことが多いです。レンタル代金は、医療費が3割負担の場合で一カ月につき4,750円ぐらいです。機械の管理やチューブ・マスクの消耗品の供給などは病院あるいは在宅医療の会社がしてくれます。

CPAPはどうやって使うの?

 「鼻にマスクをつけるなんて、プロの看護師じゃないと無理じゃないの?」、「万が一、眠っている間にマスクが外れてしまったらどうしよう?」そう心配される方もいるかもしれません。そのため、CPAPはいきなり自分で使うのではなく、病院に一泊入院してしっかり使い方を教えてもらうことができます。また、今どきは便利な時代なので、機種によってはネット上で使い方の動画が流れている場合もあります。他にも、CPAP治療は全部自分でしないというわけではなく、月1回病院で診察を受ける必要があります。診察を受けるなんて面倒くさいと思われるかもしれません。でも、心配なことや不安なことを病院できちんと確認できる良い機会と思えば安心です。

CPAPってどのくらい治療効果があるの?

 治療を受けるにあたって一番重要なのは治療効果ですよね。SASを患っている人の約半数の症状が劇的に改善したと少しご説明した通り、CPAPは現在SASの治療で非常に有効であると実証されています。
 スペインでCPAP治療の有効性を実証した研究があります。その研究では、SASではないけどいびきがある人、軽症のSASの人、重症のSASの人、CPAP治療を受けている人、そして一般の健康な人とで心筋梗塞や脳卒中のなりやすさに違いがあるのかを10年間に渡って調査しました。その結果、一般の健康な人と比べ、重症のSASの人で4倍、軽症のSASの人で2倍ほど心筋梗塞や脳卒中になりやすいことが分かりました。しかし、CPAP治療を受けていた人たちは、軽症のSASの人たちよりも死亡率が低かったです。このことより、CPAP治療を受けることで、SASによって引き起こされやすい心臓血管系の病気を起こしにくくすることができることが分かりました。
 他にも、イギリスの西オンタリオ大学では、SASを患っている人のCPAP治療前後の交通事故率を3年間に渡って調査しました。その結果、CPAP治療を開始する前は一般の人よりもSASを患っている人は3倍も交通事故を引き起こしていたのが、CPAP治療後は一般の人と変わらなくなりました。交通事故の原因はSASだけではありません。それでも、3倍も高かった事故率が一般の健康な人と同じぐらいになったというのは注目すべき結果です。

CPAP治療に副作用はないの?

 いい薬であっても副作用があるように、CPAP治療に副作用がないか心配になりますよね。
 装置をつけるということもあって、最初の頃は以下の不調を感じることもあるかもしれません。
 ・ずっと空気が送り込まれるため、眠りにくい
 ・お腹が張る
 ・鼻の周りがかぶれる
 ・鼻や喉が渇く
 ・目が乾燥して違和感がある
 ・耳鳴りがする
 でも、安心してください。上記の症状は治療が合わないことによる体調の悪化ではありません。ちょっとした工夫で治ります。細かいことは主治医の先生と相談するのが一番ですが、何でそんな不調が生じるのかを以下で簡単にご説明します。

(1)「ずっと空気が送り込まれるため、眠りにくい」ことへの対応

 おそらく、私たちの大半は酸素マスクなんてつけたことがないと思います。そのため、酸素が送り込まれるマスクをつけるといっても、「耳鼻科のネブライザー(細かい霧状の薬を鼻や口から吸入するマスク)みたいなものかな?」と思われるでしょう。そのため、実際にCPAPをつけると、「えっ、こんなにずっと空気が来るの!?」と戸惑うかもしれません。これは、本来は息が吐くタイミングの時にもずっと酸素の空気圧が押し込まれるから違和感が生じるのです。息を吐くタイミングに合わせて酸素の空気圧を止めることはできませんが、CPAPには空気の供給するタイミングを時間設定する機能が付いています。この機能を上手く使うことで、しっかり寝た後から酸素が送られるようにすれば大丈夫なことが多いです。

(2)「お腹が張る」ことへの対応

 お腹が張ってしまうのは、送り込まれた空気をうっかり飲み込んでしまうために生じます。この問題については、CPAPから送り込まれる空気圧を調整することによって解消されます。

(3)「鼻の周りがかぶれる」ことへの対応

 鼻の周りがマスクによってかぶれたり、赤くなったりする原因は主に2つあります。1つはマスクを強く締めすぎている場合です。もう1つは、そもそもマスクの形があっていない場合です。いずれの場合も、主治医の先生に相談してみてください。

(4)「鼻や喉が渇く」ことへの対応

 ずっと空気が送り込まれているので、鼻や喉が乾燥することもあるかもしれません。その場合には、加湿器などを使って部屋の湿度を調整する必要があります。なお、加湿機能付きのCPAPもあります。そのため、そういうタイプのCPAPを使うようにすることも1つの手だと思います。

(5)「目が乾燥して違和感がある」ことへの対応

 マスクがちゃんと鼻にフィットしていないと空気が漏れてしまいます。その結果、目が乾燥してしまうということになります。このような場合も、主治医の先生にマスクのフィッティングについて相談してみましょう。

(6)「耳鳴りがする」ことへの対応

 耳と鼻はつながっています。そのため、本来は鼻に送り込まれた空気が耳から通り抜けてしまうことで耳鳴りがしてしまうということがあります。CPAPから送られてくる空気圧を弱くすることで、耳鳴りが治まることもあります。詳しくは主治医の先生に相談してみてください。

CPAP治療がおすすめな人

 SASの治療効果が高いので、欧米でも日本でもCPAP治療は最も普及しています。そのため、どんな人にもおすすめしたいところです。特に、マウスピースではSASの症状が緩和されないような中等症、重症な人にCPAP治療は向いていると思います。

まとめ

 SASの自分で自覚できる主な症状は日中の眠気やだるさぐらいです。でも、SASは命を失うことにつながる大きな事故につながりかねない病気です。もし、自分にも当てはまることがある方はかかりつけ医に相談しに行くことをお勧めします。
 現在、SASの治療ではCPAP治療が世界中で普及しています。特にマウスピースによる治療効果が認められにくい中等症・重症のSASの人にCPAP治療をお勧めします。CPAP治療を始めた最初のうちは、マスクのフィッティングに慣れていなかったり、自分に合った空気圧に調整できていなかったりするため、不快感や違和感が生じることもあるかもしれません。そういった場合には、主治医の先生に相談してみてください。
基本的にSASの治療は長期的なものとなります。でも、SASの治療を行わないことで脳卒中や高血圧などの心臓血管系の病気が引き起こされたり、取り返しのつかない事故を起こしてしまうことになります。そのため、SASの治療を決してあきらめてはいけません。

【2019CPAP購入検討者必見】上尾さんの睡眠障害を病院ではなくCPAPで甦生する~ageokousei